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「榊田さんから何も聞いてなかったんだ?」
「芹沢さんは何か聞いてたんですか!?」
弾くように顔を上げると、芹沢さんは首を振った。
「いや、知らなかったよ。
新会社設立するって思ってたから、今回の話は本当に驚いた。
長期出張するってことは、設立の話はなくなったのかな?
それとも、その噂自体がデマだったのか……。
どっちにしろ榊田さんがいなくなると困るってことに変わりはないんだけど」
そっか、芹沢さんクラスになると榊田さんがいなくなるとダイレクトに仕事に支障が出てくるもんね。
私的な感情マックスで、榊田さんがいなくなったら寂しいと思ってることがなんだか申し訳なくて恥ずかしい。
「そうですよね。ましてや一週間後に出国なんて……」
「えっ!?一週間後!?それって誰から聞いたの!?」
芹沢さんは顔色を変えて言った。
「さっき榊田さんからメールで……」
「マジで!?はあ!?一週間後とかって、これからどうすればいいの」
芹沢さんは怒りと困惑を滲ませながら、狼狽えていた。
切羽詰まった様子が見て取れる。
仕事のこと考えればそりゃそうか、うん、そりゃそうだ。
「ああ、俺も榊田の馬鹿野郎って叫びたくなってきた」
青ざめながら本気で言っている様子の芹沢さんに苦笑いしか返せない。
お互い全く事情は違うとはいえ、振り回されている事実に変わりはない。
なんだか変な連帯感が生まれて、榊田さんの愚痴を言い合いながらオフィスに戻った。
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