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シルバーに輝くカードキーを掲げて、うっとりと眺め見る。
ダイヤの指輪を貰った気分だぁ。
はあ、幸せ……。
悦に入っていると、榊田さんは衝撃的な言葉を発した。
「それと、俺社長になることになったから」
「はい!?」
惚けた頭が一瞬で冴え渡る。
社長だと!?
「やっぱり新会社設立するんですか!?」
せっかく帰ってきたと思ったのに!
「まさか。エルニカの社長になるんだよ。というか、なんだ今のやっぱりって発言は」
ギクっとして肩が上がる。
下手な嘘は一瞬で見透かされそうな鋭い目線を浴びて、しどろもどろになる。
「いや、大分前に噂でエルニカ辞めて新会社設立するって聞いて……」
「誰に聞いたんだ?」
「だから噂で……」
そこは濁すと、榊田さんもそれ以上は追及してこなかった。
「俺が社長になるかもしれないって話が、どこかで湾曲して新会社設立になったのかもしれないな。
まあ、いいさ。正しい情報は守られたってことだからな。
おかげで向こうでは誰にも邪魔されず好きに動くことができた」
「邪魔されるって誰にですか?」
「同じく社長の座を狙っている奴らさ。
前々から現社長は会長に退きたいと言っていたんだ。
現社長は設立当時から一緒に働いてきた俺を社長に押したいと言っていたんだが、他の役員や株主総会で賛同を得られるかは難しい課題だった。
そこで俺はアメリカへと飛んだんだ」
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