オレオレ

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「おばあちゃん?オレオレー。元気?」 大学受験に失敗し、家を飛び出した私は中学の時の悪友とつるむようになった。 夜の町をチンピラのような格好で歩く若者が、オレオレ詐欺の集団にスカウトされるには時間はかからなかった。 罪悪感のない私は、電話帳を片手に手当たり次第に電話をかけた。 「事故を起こしちゃって、示談金がいるんだ。」 案外簡単に大金が入ってきた。 「ありがとう、おばあちゃん」 そういう私に、 「大丈夫。今度顔を見せにおいで。ご馳走作るから。また、電話ちょうだい」 孫の不幸を痛む優しい声。そんな声も受話器の向こう側。顔が見えないということが、罪悪感をなくさせている大きな要因だったように思う。
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