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『ピンポーン、ピンポーン』
コンコンコン、
「おばあちゃんだよ。」
コンコンコン・・・
布団にくるまって震えていると物音が消えた。
ドン!
「おい、いるのになんで開けないんだよ」
口調が別人のように変わったが、間違いなくあのおばあちゃんの声だった。
ドン!
ドアを蹴飛ばすような大きな音。
「孫のために用意した三百万、返せよ。」
(とりあえず、警察に電話を)
携帯電話を手にすると、まだ『通話中』の文字が。
「ドアを開けろよ」
電話からも声が聞こえてくる。その電話を切って110を押して電話を耳元に持ってくる。
カチャ
「もしもし、助けて下さい。今、変な人が家に。今、」
「変な人じゃないよ。おばあちゃんだよ。」
おばあちゃんの声。
「今、開けるからね」
ガチャン。
鍵が開く音。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ガチャ、キィー。ドアが開き、玄関から足音が近づいてくる。
毛布にくるまったままの姿勢で、全身が硬直して動かない。
足音はゆっくりと確実に寝室に近づいて来る。
が、足音が寝室のドアの前まで来ると、気配が消えた。気配が消えてからも恐怖で布団から顔を出すことができない。
どのくらい、動けずに布団の中にいたかわからない。
ピチチ・・・
鳥の鳴き声。
(朝だ・・・)
恐る恐る布団から顔を出し、固く閉じた瞼をゆっくりと開ける。するとそこには、
「三百万、返せよ」
鬼の形相の老婆が立っていた。
「・・・・・・・・」
声も出なかった。
おばあさんは私の目を見つめると、なぜか一瞬笑って消えた。
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