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その先に何を見るのか(仮)
ざわざわと吹き付ける風に動かされる木を教室の窓越しに映す。紅葉の途中といった色彩の葉と葉の隙間には、緩やかに色を変えつつある夕焼けと運動部らが汗を流すグラウンドが見えては隠れ、見えては隠れる。昼間は騒がしすぎる教室も放課後となれば廊下を走る生徒の足音が聞こえるくらいには静かだった。今も足音が一つ、こちらへと近づいてきている。
「部長! せめて活動中はどこ行くかホワイトボードに残してってくれません? 部長探すの毎回毎回私の仕事なんですけど!」
「今、カメラまわしてる」
背後から聞こえた声にビデオカメラの画面に目を向けたまま、それだけをこたえる。映像を切り貼りして作品に仕上げる都合、必要な秒数は十秒足らずでも一分くらいはカメラをまわし続ける必要があるのだ。
特に、屋外を映す際には光の具合も風の強さも刻一刻と移り変わり、タイミングを逃せば次にいつ満足のいくものがとれるのかわかったものではない。
「どうせ三脚だから手ブレしないし、音も消しちゃうじゃないですか」
「編集中にうるさい音が入ってると怠いんだよね……」
撮影時間を確かめ、終了ボタンを押して振り返る。彼女のトレードマークであるカチューシャをつけた雨晴さんが、教室の出入口で腕を組んで立っている。
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