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不服げな表情をした彼女は肩くらいまでの髪の一掴みを左手で弄びながら、
「女の子にうるさいとかどうかと思うんですけど」
とよく通る声で言う。元々、力強くはきはきと話す彼女の声に今は鋭さを伴った不満の感情がきっちりとのせられている。舞台の役者にでもなれば活躍する素質があるに違いない。
とはいえ、今不満を向けられているのが紛れもない僕である以上、そんなぼんやりとした思考ばかりをいつまでも働かせておく訳にもいかなかった。
「そういえば、何の用? 文化祭の作品は部室にちゃんと置いといたはずだけど」
「いや、初文化祭の一年二人を置きざって部長がうろうろしてるのもそれだけで問題しかないと思うんですが!
まあ、今回は別件です。生徒会の方で映像部に文化祭の映像を作ってほしいって言われたので部長を探しに来たんです」
文化祭の映像、ねぇ……。僕は部の展示をする社会科教室の責任者だし、雨晴さんはヒラとはいえ多忙が約束された生徒会メンバー、残るは幽霊部員と受験を控えた三年生の先輩方、それと一年生が一人。とても撮影に割ける人手はない。
僕はカメラをケースにしまい、三脚をたたむ。雨晴さんはそれ以上は自分から口出しせず、こちらの動作を記録でもとるかのように見つめている。
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