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そして私は邦田のアパートに行った。鼻孔に感じた臭いに身構える。今まで何度か遭遇した事がある、腐臭だった。
「そこで、何を?」
怪訝な声がした。警官と、大家らしき老婆が立っていた。警察相手に嘘をつくのは得策ではない。私は自分の身分と事情を依頼人の名前だけ伏せて明かした。
やはり警官も通報があって此処に来たという。彼は私に後は任せるように忠告したが、私は依頼人の事を思うと引き下がれないと居座った。諦めたように警官が扉を開ける。一瞬、無数の羽虫が驚いたように辺りを飛び交って視界を塞ぐ。目を開けると、無残な腐乱死体が部屋の奥に倒れていた。近くには千切れたロープがぶらさがっている。私はあっという間に現場を追い出された。
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