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見慣れた靴に、見慣れた傘立て。見慣れた靴ベラ。それは、俺の部屋の玄関と瓜二つだった。
一体これは、どういうことなのだ。
俺は、もう一度ゆっくりドアを開けた。
やはり見間違いではない。まったく同じ靴だ。
玄関脇のスイッチを押すとキッチンと廊下を照らす電気がついた。キッチンの先に、部屋が見える。
俺は、どうしても部屋の中を確かめたかった。玄関に置いてあるものは、揃えようと思えば同じものを揃えられる。しかし部屋には俺しか持っていないものがある。
部屋に足を踏み入れた。電気をつける。
改めて確かめるまでもなかった。高校の部活でもらった寄せ書き。これはこの世に一つしかないもののはずだ。つまりこの部屋は、なにからなにまで俺の部屋とまったく同じなのだ。
間取りと同じように、ベッドの位置や、テレビの位置など、部屋の中の物は全てが左右対称になっている。
背筋が凍った。今すぐこの部屋を出たい。
しかし俺の目線は、ベッドの脇にある窓に釘付けになった。
少し開いた窓からはかすかに風が吹き込んでおり、カーテンがひらひらと動いている。
確かめたい。
いや、確かめてはいけない。
相反する二つの感情の中でパニックになった俺は、それでも自分の部屋の方の壁へ、手をついていた。
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