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山びこの隣人
先日、妙な隣人が引っ越してきた。顔を合わせたことはないが、とにかく奇妙なのである。
俺が自分の部屋の窓を開けると、隣室からはドアをあける音が聞こえる。
俺がトイレに入って用を足すと、隣の部屋からもトイレの水が流れる音が聞こえてくる。
またある時は、誤って作動した目覚まし時計のベルの音が、隣の部屋からも聞こえてきた。
なぜかは分からないが、隣人は俺の出す音を真似しているようなのだ。
そして今日の昼間、いよいよ俺は隣人に文句を言ってやろうと隣の部屋の呼び鈴を鳴らした。
しかし、隣人は出てこなかった。
夜になった。俺は、再び隣室の呼び鈴を鳴らしてみた。応答はない。思わずドアに手をかけて、手前に引いた。すると、ドアはなんの抵抗もなく開いた。
「あっ、す、すいません……」
俺は、さっきまでの勢いが嘘のような情けない声を出してしまった。
しかしその瞬間、俺は強烈な違和感に襲われた。
この部屋は、俺の部屋と向きが逆なだけで、まったく同じ間取りをしているらしい。
いや、そんなことよりも。最も違和感を感じたのが玄関の様子だった。
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