少女探偵

如月

これが、如月家.......。

俺は昔の友人のツテでボディガードを引き受ける事になった如月財閥のお嬢様が住む邸宅の前に来ていた。

紹介者から要塞の様な家と聴いていたのでどんな大邸宅かと思っていたが、遠くに白亜の四角い立方体の建物が見えるだけで大きな豆腐が間違って庭園の中に落ちてるように見えた。

しかし、門はしっかりしているし、セキュリティの為かあちこちに監視カメラが設置されている。

今も監視されている気がする。

思わず胸ポケットに手を延ばしかけて、ふと思い直すと軽く息を吐いた。

「そうだった」

しばらくして馬の飾りの付いた門が左右に自動的に開いてまるで
「入ってきていいよ」
と言ってるようなので少しだけ躊躇したが已む無く入って行った。

真四角の建物は遠近感を鈍らせるらしく近いと思ってた豆腐みたいな建物はいつまで立っても到着出来ず、やっと到着した時その馬鹿でかさが理解できた。

近づくと扉の形をした窪みがあるのだがいまいち、扉であると確信を持てないのは扉には必ずあるべきものがないからだろう。

ドアノブがない。

ドアの横には普通のインターホンの様なものがあったので押してみた。

ぴんぽーん

俺はありふれたチャイム音に僅かに安堵しながらも恐る恐る話しかける。

「あ、あの、ボディガードの依頼を受けた裏山です」

しばらくの沈黙。

いきなり扉がひらいた。

というか、上に吸い込まれていった。

「う、、うえ？」

思わず声をだしてしまった。

なるほど、取っ手が無いわけだ、取っ手があったら、途中でつっかえるもの！

ひとしきり驚いてから視線を建物の中に移すがお迎えの人がいるわけでもなく、玄関と長い廊下の向こうに今度は普通の扉が見えた。

ん？これは勝手に上がってこいってことなのかな？

セキュリティが高いのか低いのかよくわからない。

それにたしかに、雇われる身と雇う身ではあるが、だれも出迎えないのはちょっと失礼な様な気もする。

などと、考えていると、奥の方の扉が開いて、誰かが顔を出した。

ん？お嬢様にしては普通に成人してる様に見えるし服装は白と黒のシンプルなメイドの様な格好をしている。

そして、ゆっくりとこちらを伺うような目で見てから手招きをした。

手招きって俺は猫かなにか？

無口なメイドはドアを開けて中に入る様に無言で促した。

何となく嫌な予感がしながらもそろりと部屋に入ると後ろからいきなり手首を掴んで関節技よろしく捻(ひね)り上げてきたのは立ち位置からして件(くだん)のメイドに間違いない。

「うわあぁあ！なにするんですか！？」

「なにって、テストですよ」

メイドは当然の様に言い悠然とくの字に曲がった俺の身体を見下ろした。

あ、なるほど、テストね.......と納得するには常識を何個か捨てる必要があった。

俺はどうしようか迷ったが仕方ない、交戦することにした。