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俺は不思議な感覚に囚われていた、目の前に居るのはいかにもと言ったお嬢様なのだが、俺はその少女に変な威圧感を感じていた。
この感覚は...たしか、昔俺がかなり弱かった時に格上の格闘家と対峙した時の感覚と酷似している。
「あ、あの」
俺はこの不可思議な呪縛からなんとか逃れる為になんでもいいから質問する事にした。
「なに?」
「変な質問ですが、こちらの好戦的なメイドさんバアヤって呼ばれてましたけど、そんなにお年を召している様には見えないんですが」
もし本当に歳を誤魔化していたとしても悪い気はしない様な質問を投げかける。
最近では特殊メイク並の化粧を施せる人もいるらしい。
「あーその事ね、それは本人から聞いた方が良いかも」
「桜庭彩」
唐突にメイドさんが口を開いた。
「へ?」
「だから本名がサクラバアヤなのよ、おわかり?」
「え?あー!」
なるほど、本名の下の方を取ってるのか、でもなぜ?
「あの、しかし」
「なぜ、桜庭の方で呼ばないのか?でしょ?それは生理的に許せないんだって変でしょ?」
そう言ってお嬢様はクスクスと笑った。
俺は少しだけ、ほっとした。
笑うと普通の女の子なんだ。
「生理的にですか、そりゃまたなんで?」
俺は本当に興味が湧いて来た。
「それは、あなたの前にボディガードを頼んでいた方が咲良のお嬢様に取られてしまったので自分の苗字が嫌いらしいの」
「えー!」
そんな理由、と言う台詞をギリギリ飲み込んだ。
「で、でもじゃあ名前で呼べば良いのでは?」
「それだと、同じアヤと言う名前の人と被るのでダメらしいわ」
「な、なるほど…」
バアヤと普通に呼ばれてる人とも被るのでは?と言いたかったがギリギリ堪えた。
「言っときますけど、私をバアヤと読んで良いのはお嬢様だけですからね!」
桜庭彩に釘を刺された。
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