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「では、なんとお呼びすればいいですか?」
「それは普通に桜庭さんで良いですわ」
「はい、了解しました、サクラさん」
「サクラではなくてサクラバさん!」
「り.......了解」
俺はまた、背広の下のワイシャツのポケットをチラッと見るような仕草をした。
「なに?拳銃でも隠し持ってるの?」
バアヤにそう言われて勢いよく頭を振った。
「まさか、武器なんてもってませんよ、ほら」
俺は背広の裏側を見せてアピールした、ワイシャツもおろしたてのように皺一つない。
「バアヤ、それは建物に入る前にわかってる筈でしょ?意地悪はよくないわ」
「え?なんで?」
「にぶいですね。あなたが通ってきた庭にはちょっとした仕掛けがしてあるの、あんた携帯とライターくらいしか持ってないわよね?」
「え?」
ばあやは誇らしげに続けた。
「いわゆる、X線のようなもので武器をもってないかAIが判断して」
「ちょ、ちょっとまってエーアイって?」
「この家を守っているAIのKISARAGIさん、もしも武器を持っていたらあんたは自動的に隔離されて無力化されてたところよ」
「む、無力化とは?」
「大丈夫、庭に仕掛けられてるのは合法的なものだから」
庭じゃなくて建物内には非合法な装置があるんだろうか?
俺は生唾をゴクリと飲み込むと言葉を続けた。
「そ、そりゃすごい」
そう言ってぎこちない笑顔を浮かべる。
すごいセキュリティだ、大方ドアが上にスライドするのも訪問者がドアの後ろに隠れる死角を無くす為なのかもしれない。
「なるほどね、たしかにこれは小さな要塞って感じだな、えーあの、それで、、俺は、、いや、私めは採用?それとも裏拳の演舞でも見せましょうか?」
今のところ大きなチョンボもしてない筈だ。
「そうね」
お嬢様は少し考えて言った。
「禁煙をこのまま続けるなら採用しようかしら」
「ありがとうございます.......え?」
謝意と同時に疑問符が浮かんだ。
なぜ、禁煙してる事を知ってるんだ?
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