ウンディーネの淫蕩 1

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 第一楽章は騎士フルトブラントが鬱蒼とした森を抜け湖の村に迷い込み、美しい少女と出会うところからはじまる。彼女は魂を持たない水の精ウンディーネ。魂を得るには人間の男と愛によって結ばれなければならない。愛らしい妖精は凛々しい騎士に無邪気にまとわりつく。その無分別を育ての親である老漁師に叱られて水の精は嵐の中に飛び出してしまう。それを追いかけた騎士は激しく流れる川も横切る老木の下、草花の咲き乱れる芝生の上に座って微笑む彼女を見つけ傍にいることを望むのだ。  大嵐は第二楽章になっても続く。相変わらず無作法にはしゃぎまわる水の精。それを咎める老養母に自らの自尊心を傷つけられるような気分になる騎士。長く続く悪天候に、家の中の雰囲気は悪くなる。そんな折、嵐の中で迷い助けを求めて現れた司祭に運命を感じた騎士は彼女との婚礼を決意する。婚礼の間、しとやかに振舞っていた水の精は、式が済んだ途端手が付けられないほどにはしゃぎまわるのだった。  大嵐が嘘のようにさわやかな日差しに包まれる。氾濫し暴れ狂っていた川は清らかなせせらぎとなっていた。落ち着いて穏やかになった妻を騎士が故郷に連れて帰る第三楽章。しかし騎士の城では婚約者が待っていた。騎士は水の国の住人からの悪戯や、人間ではない妻を次第に疎ましく感じるようになる。それを察したウンディーネは大切な二つのことを騎士に伝える。水の傍で水の精を叱責すれば、一族は辱めを受けたと思い、引き離されて一生水の国へ留まらなければならぬこと。そして貞節を守ること。もし他の女性と結ばれることになれば、水の精は掟に従い、夫の命を奪わねばなければならないこと。  レッスン室の中に響き渡るのは第四楽章。不穏で悲しげなフルートの音色が室内を包み込む。二人の間に悲しみが訪れる。
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