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ウンディーネの淫蕩 1
嵐が猛威を振るう。
全てのものを叩き壊すかのように、湖が川が氾濫する。水は森の木々をなぎ倒し、小さな町を飲み込むように荒れ狂う。大きく冷たい雨粒は窓ガラスを叩き割る勢いで打ち付ける。目前の鍵盤を叩きながら、指先を驚くべき早さで動かす男を見つめる。銀の横笛と共に細い腰が僅かに揺れ、眉が切なげに顰められる。不意に薄く開いた瞳は、この世にあるもの以外を見つめ、その身は嵐の中にいる。いや、その華奢な身体から嵐を巻き起こしている。そんな激しさは経験したことがない。
音と音が絡み合う。
曲はライネッケのピアノとフルートのためのソナタ『ウンディーネ』。
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