異なる伴侶が遺すものは

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「君とパートナーになってから、もう、四十年になるかな」  唐突に、ケイがそんなことを口にする。 「……そんなに、経ってしまったのね」  鏡に映る自分の顔を見ながら、レンは、かつての自分を想い出そうとする。  だが、うまくいかない。あれだけ、ケイとともに写真を撮り、様々なメディアに出演したというのに。 「そりゃあ、お婆ちゃんになっちゃうわよね」 「……僕も、そうさ。君と出会った頃のようには、もう、動けない」  そう呟くケイは、けれど、レンの瞳には同じように映る。  顔も、ふるまいも、胸をときめかせた頃と同じように。 「君とともに、年月を、重ね続けた」 「……?」  そう呟くケイに、レンは少し違和感を感じる。  動きが鈍り、以前とは違う生活になっても、ケイはあくまでケイとしてふるまってくれた。 なのに、今日は……どこか、引っかかりを覚える。 (同窓会の、せいかしらね)  会場で言われた、永遠の伴侶。――あの当時、そうした存在を求めた女達は、確かにいた。  人間を超え、人ならざる美しさを持ち、衰えない姿を持った『ドール』。  彼らとの結びつきは、一時、異端ながらも憧れを持った、夢物語の一つだった。  孤独への不安、老後への恐れ、異性との距離感。そうした要素が高まった背景も、あったのだろう。  『ドール』としての機能を制限され、あえて鈍さや愚かさも加えられた彼らは、逆にとても魅力的だったとレンは想う。  また、当時は『ドール』への賛否が分かれ、人として扱うべきだという機運も残っていた。 「今も、夢を見ている子はいたわよ。あの当時、やっておくべきだったって」  そうした社会的な要望が高まった中で、試験的に導入されたのが、『ドール』とのパートナー制度だった。 「僕の仲間達も、戸惑いながら、嬉しそうではあったね」  あの当時は、あらゆる情報や話題に事欠かなかった。  ケイは、懐かしそうにそう呟く。
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