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「本、読んでいたのね。また、古本屋で新しい本を見てくるわ」
「あぁ、君が贔屓にしている本屋だね。品揃えもいい、っていう」
「本の修理もやってるの。私の昔の本も、直してもらおうかしら」
レンはそう言い、本棚の一角に視線を送る。
そこに並べられているのは、まだ書籍という形で発行されていた頃の、自分の作品達。
そのなかには、二人の生活を記したエッセイ本も、同じように並べられている。
「……今度、一緒に行きたいわね」
本を好むケイにとって、それは、魅力的な提案のはずだった。
「君との想い出が増やせるのなら、どこまででも、いきたいよ」
しかし、本を受け取ったケイの顔は、どこか晴れきらない。
「どこまででも、なんて大袈裟ね」
「無理は、しないでほしいんだ。本は、高価な物だからね」
「少しでも、情報には触れた方がいいわ。あなた、好奇心旺盛だしね」
本であれば、触れられる娯楽として、心配はない。
すでに、社会的に適用外とされている彼のメインシステムは、デジタルな認証を突破できない時が増えている。
(……ウイルスと間違われたときは、恐ろしかった)
不安を感じた過去を想い出しながら、彼に手元へ眼をやると。
「その本、この前も読んでいたわね。面白いの?」
何気なく、そう聞いただけなのに。
「――そう、でしたか?」
「……っ」
ごくり、と、レンは息をのむ。
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