『鮫の歯』

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 宿と言っても、実家だった家のすぐ傍にある、元嫁の親戚筋。只で泊めてくれても良い筈なのに、三食付きで八千円もとる。私は陰気な食堂で、夕食を食べた。懐かしい魚の刺身がある。名は確か、サブエとか言ったか。子供の頃、食卓に上がってはいたが、姿そのものを見た記憶がない。鮫肌でワサビをすりおろし、醤油を少々。歯ごたえは、ほとんどないが、濃い旨味のある魚。ずいぶん久しぶりに食べたが、これほど美味かったとは、思いもしなかった。  舌鼓を打った後、形ばかりの温泉に浸かり、晩酌を少々。
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