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「もう一回!言って!」
「…は、恥ずかしいです佐助さっ」
しょうちゃんがまた言おうとしたから頬を膨らませる。
すると少女のように可愛い顔でーさっちゃんーとはっきり言った。
何だか名前一つでとても距離が縮まったような気がして嬉しかった。
それからしょうちゃんと練習を重ねて自然とさっちゃんと呼ぶようになった。
「さっちゃん、ダメですよ…好き嫌いは」
「うー…だってピーマン苦いんなんだもん」
しょうちゃんは少し考えて野菜炒めが盛り付けられた皿を見る。
皆もう食べ終わり、しょうちゃんは俺が残さず食べるか見ていた。
大好きなしょうちゃんの前でカッコ悪いところ見せたくないが、ピーマンは嫌いだった。
「これ、僕の手作りなんです…さっちゃんに好き嫌いしてほしくなくて…美味しく作ったつもりだったんですが、美味しくないですか?」
「えっ!?」
しょうちゃんが泣きそうな顔をする。
そういえば野菜炒めは俺のテーブルにしかなかった。
そう考えるとずっと食べたくなかったピーマンが美味しそうに見える…気がする。
フォークでピーマンを刺し、口に入れる。
やはり苦い…でも、しょうちゃんの手作りなら自然と食べれた。
しょうちゃんは不安そうに見ていた。
「だ、大丈夫?気持ち悪くない?」
「食べれた~、しょうちゃん…俺、えらい?」
初めてピーマン入りの料理を完食してしょうちゃんを見る。
しょうちゃんは微笑んで頭を撫でてくれた。
ピーマンが好きになったわけじゃないが、しょうちゃんの手作りなら平気になった。
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