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そして俺は何の傷もない綺麗な腕を見て驚いた。
包帯には僅かに血が付いていたのに、どういう事だ?
「しょうちゃん、治ってたの?」
「…傷は一ヶ月で治ったんです」
「じゃあ、どうして包帯を…」
「俺にとって大事なのは傷じゃなくて包帯の方なんですよ」
そう言うしょうちゃんは床に落ちた包帯を大切に抱きしめる。
…よく見ればその包帯はかなり古い包帯だった。
もしかしてその包帯…子供の頃怪我をした時に巻いていた包帯?
「この包帯はもう治って見れない大切な傷を思い出してくれるものなんです」
「………傷」
「俺は佐助様が俺に与えてくれる全てが宝物なんです…傷も触れた体温も」
そう言うしょうちゃんは俺の頬に触れた。
俺は目が慣れてやっと起き上がり座りながらしょうちゃんと向き合う。
しょうちゃんは再び包帯を腕に巻いていた。
「申し訳ございません、これが佐助様の負担になっているなんて」
「…しょうちゃんは…俺の事、恨んでないの?」
「まさか!貴方に何されても恨む事だけは絶対にありません、俺は…ずっと佐助様を…愛しているんですから」
また頬に涙がつたう。
これはどんな涙なのか分からなくなってきた。
とにかく今は頭を撫でてほしかった…
しょうちゃんは俺の気持ちが分かるのか撫でてくれた。
俺は…自分の気持ちを全てしょうちゃんにぶつけたい…溢れてとまらない。
「お、俺…貧乏で…借金しかなくて、ほんと…どうしようもない落ちこぼれだけど…でも、しょうちゃんが誰かに取られるのは見たくない!俺だってしょうちゃんを大好きだから!!」
「…佐助様」
しょうちゃんは俺を優しく抱きしめてくれた。
昔と違い、頼りになる胸の中で俺は目が赤くなるまで泣いた。
…もう、泣き虫で弱いしょうちゃんじゃないんだなと立場が逆転した今、そう思っていた。
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