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「さっちゃん、危ないよ!」
「大丈夫だよしょうちゃん」
子供の頃、俺はやんちゃな少年だった。
よくイタズラをしてはお手伝いさん達を悩ませていた。
そして今も木に登り小さい俺の執事を困らせていた。
見下ろすと心配そう…というか半分泣いた顔がこちらを見上げている。
男なら木登りぐらい出来ないとかっこ悪いと同級生達に聞かされて、男らしさをしょうちゃんに見せつけている。
…しかし足場が悪い、もっと高く登ろうと木に足を引っ掛ける。
すると、ズルっと木を擦り足場がなくなる。
「うわぁぁっ!!!!」
「さっちゃん!」
ドスンと体が落ちた音がした。
痛みに堪えるために目を閉じたが痛みはなかった。
不思議に思い目を開けて驚いた。
「しょうちゃん!」
「……さっちゃん、大丈夫?」
しょうちゃんが俺の下敷きになっていた。
俺は慌ててしょうちゃんから退き、今度は俺が泣きそうな顔をする。
しょうちゃんは何でもないように笑った。
そんなわけない、だって…腕が…
「しょうちゃん、腕…血…」
「さっちゃんが無事で良かった」
しょうちゃんの腕から血が流れていた。
俺はすぐに使用人を呼びに走った。
…それから、しょうちゃんがどうなったのか…俺は知らない。
俺の両親は離婚して、俺は生まれ育った支倉の家を出ていったのだから…
見事な転落人生とはまさにこの事だ。
支倉の家は世界でかなり有名な財閥だった。
そこで生まれた俺は長男として家を継ぐ事が約束されていた。
子供ながら専属執事のしょうちゃんがいるくらいだ。
家を継ぐために子供の頃から経済の勉強などをやり学校の成績もいつもトップだった。
俺も、しょうちゃんと一緒に支倉の家を支えようと思っていた。
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