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俺は一瞬だけ翔の顔を見た。
「…俺はずっと探していたのに、なんでそんな…嘘を付くのですか?」
また泣きそうな顔…
昔の俺ならきっと頭を撫でて慰めていただろう…年上なのに泣き虫だったから…
でも、今の俺の手は汚すぎる…綺麗な翔には触れないんだ…ごめん。
俺はそのままトイレのドアを開いた。
翔は追いかけてはこない…そりゃあトイレに用事があったんだから当たり前だよな。
下を向いた時、翔の腕に白いものが見えた…あれは包帯だ。
俺が子供の頃に翔に傷を負わせた場所、まさか後遺症が残ってるのか?
…俺を探していたと言ったが…きっと恨んでいたのだろう。
償わなくてはいけない、でも…今の俺が翔の近くにいたら迷惑になる。
どうしようかと悩んでいたらポンといきなり肩を叩かれて翔だと思い顔を隠して叫んだ。
「ちっ、違います!俺は佐助じゃ…」
「いや佐助だろ」
呆れた聞き覚えがある声がして顔を隠していた腕を外し見ると友人の平凡な顔が見えた。
…なんだ、塁か。
俺と同じ貧乏だから親近感が湧き仲良くなった立花塁は俺に教材を渡した。
「何言ってるかさっぱり分からないけど次移動だろ?早く行くぞ」
「あ、ありがとう…」
ちょっと翔かと思って期待していた自分が嫌になる。
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