4 差し出されたその手をとる

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 どのくらいそうしていたのだろうか。  やがて落ち着きを取り戻したツェツイは、ゆっくりと顔を上げ涙に濡れた目でイェンを見上げる。 「ごめ……ごめんなさい……」  イェンはツェツイの頭をくしゃりとなで、目の縁にたまっていた涙を人差し指の背でそっと拭った。 「そいつの墓、作ってやろうぜ」  そいつと言って、イェンはツェツイの手の中のヒナに視線を落とす。 「はい」  ツェツイは目を閉じ、ヒナのお腹のふわふわの毛にそっと頬を押しあてた。そして、手近にあった石と木の棒で桜の木の根元に穴を掘りヒナを土に埋める。  イェンは花壇に咲いている花を手折り、ツェツイの手に握らせた。  仰ぎ見るように顔を上げたツェツイの目から、ぽろりと涙がこぼれ落ちる。  花を添え手をあわせた後、ツェツイは木の上に視線を上げた。  親鳥が巣のわきの枝にとまって鳴いていた。 「ツェツイ」 「はい……」 「本当に魔道士になりたいと思っているのか?」 「なりたいです!」
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