2 お師匠様のお家に

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 やれやれと肩をすくめ、イェンはツェツイの身体を抱き上げる。そして、おもわず眉をひそめる。  ほんとにこいつ、軽いな。  腕にかかる重みは信じられないほど軽く、柔らかかった。抱き上げたと同時にぼんやりと目を開けたツェツイが、首に手を回してきゅっとしがみついてきた。 「あらあら、すっかり懐かれちゃって。可愛い子じゃない」  くすくすと笑うアリーセを、イェンは一瞥しただけであった。 「どうした?」 「もうお腹いっぱい。楽しかった……」 「そうか。よかったな。眠いんだろ。もう寝ろ」 「お師匠様といっしょ?」 「寂しいのか? アリーセが一緒に寝てくれる」  ツェツイはふわりと笑った。 「お師匠様……ありがと……ございます……」 「いいから」  寝ちまえ、とツェツイの耳元で囁いて、あやすように背中を叩くと、安心したのか、くったりとなってすぐに安らかな寝息をたてて眠ってしまった。  ツェツイの身体から、ふわりとミルクのような甘い香りがした。 「それはそうと」  椅子に腰を掛けたアリーセは、ポケットから煙草を取り出し火をつける。 「あんた、気づいているでしょう?」  扉に向かって歩きかけたイェンは、アリーセの問いかけに何が? と、肩越しに振り返る。 「その子」  アリーセはふうと煙を吐き出し、葡萄酒がそそがれたグラスに手を伸ばす。 「すごい魔力を内に秘めてるよ。うまくその子の眠っている能力を引き出してあげたら、とてつもない勢いで成長する」  と、グラスを傾け上目遣いにイェンを見上げる。  しばし、目を見合わせる二人。けれど、イェンは無言で肩をすくめただけであった。
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