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「アルト、ノイ、行ってらっしゃーい」
「おう! 行ってくるぜ」
「帰ったら、遊ぼうぜ!」
ツェツイとイェンに見送られ、双子たちは教材片手に元気よく学校へと走って行く。
そんな、彼らの背中を見つめ、にこやかに手を振っていたツェツイの表情がふと陰った。
父が他界してから、母ひとりでツェツイを育ててきた。
その母も病で倒れて亡くなり、以来、ツェツイは学校へは行っていない。
生活するために、働かなければならなかったからだ。
とはいえ、働くとはいってもまだ十歳の子ども。たいした仕事などあるわけもなく、母の知り合いが営んでいる町の食堂で、好意で働かせてもらっているのだと、ツェツイはぽつりと語った。
ツェツイにもできる簡単な仕込みの手伝いや、皿洗い、店内の清掃といった雑用がおもだ。
振っていた手を下ろし、ツェツイはふと首を傾げてイェンを見上げた。
「そういえば」
「何?」
「お師匠様は学校には行かないのですか?」
「学校? んなもん、行くわけねえだろ」
「え! サボりですか? 進級できなくなりますよ」
「おまえなあ。俺を何歳だと思ってんだよ。ていうか、お師匠様はやめろって言ってんだろ。おまえの師匠になった覚えはねえぞ」
しかし、ツェツイは聞いていない。
首を傾げたまま、うーんと唸った。
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