5 修行開始!

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5 修行開始!

 そして、イェンの家にしばらくお世話になりながら、ツェツイの一ヶ月という期限つきの魔道士修行が始まった。  果たして、一ヶ月という期間が短いのか長いのかと問えば、誰もが間違いなく同じ反応を示すだろう。  たったそれだけの期間で魔術を習得しようとは、何をばかなことを言っているのだ。  無理に決まっているだろう、おまけに、師匠があの万年初級、落ちこぼれ無能魔道士じゃあ、望みの欠片もない……と。  たとえ、無理でも何でも、人から失笑をかおうと、成し遂げなければならない。  何より、仕事を辞めてしまったツェツイには後がないのだ。  テーブルを挟んで向かい合うイェンとツェツイの二人。  ツェツイは緊張した面持ちで、イェンは足を組んで椅子にふんぞり返って座っている。そんな二人の様子を、薄く開いた扉の隙間から、ノイとアルトが顔をのぞかせていた。 「まずはこの花を元気にさせてみろ。回復術の基本の基本、初歩の初歩。これができなきゃ、まあ、話にならねえな」  イェンはテーブルの中央に置いた一輪のすみれの花をあごで示す。  水に挿すことなく、切り取って時間がたったすみれの花は、しんなりとして心なしか元気がない。  ツェツイはじっと花を見つめ、イェンに視線を移し、戸惑いに首を傾げる。
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