2章 学院の生徒たち

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2章 学院の生徒たち

 翌日の放課後、授業終了の鐘と共にアルベールはさっそく教室を飛び出し、寮の部屋に教科書を置いてから待ち合わせの場所へと急ぐ。 「レイ」  相手はすでにそこにいた。石柱がアーチで繋がる回廊の端で、レイヴィスがにこやかに手を上げる。 「授業はどうだった? お前はできる奴だから、特に問題なかったろ」 「うん。前の学院の方が進んでたから、何とかね」  アルベールが学んでいたのは、生まれ育った地元である東地方の寄宿学校だ。銀行を営む父が自分の母校に進んで欲しいと希望したので、素直にそうしたのだ。  一方のジェレミーは、南地方の生まれだ。地元の名門であるシャントルイユ学院に入学が決まっていた彼と学び舎を共にできないのは残念だったが、二人が住む街は距離があるので致し方がなかった。いくら寄宿学校に入るといっても、週末休暇や帰省のたびに丸一日列車を乗り継ぐのは時間がかかりすぎる。  ジェレミーの母はアルベールの母の姉、つまりは伯母だ。この伯母が南地方の貿易商に嫁ぎ、ジェレミーが生まれた。ちなみにレイヴィスの実家は、その隣の街にある。シャントルイユ学院のふもとの街からも近い。  レイヴィスとは、国内の名士が集まる夜会で父同士が知り合い、デュトワ家が新築したという海辺の別荘に招かれたことで仲良くなった。レイヴィスの父は一代で海運業者を築き上げた傑物、歳の離れたレイヴィスの長兄は父の片腕を勤め、次兄は航海士として舵を握り、世界の海を飛び回っている。レイヴィスも将来はそちら方面に進みたいと、いつか話していた。  アルベールは、隣を歩くレイヴィスをそっと見つめた。  彼とはすでに家族ぐるみで交流しているし、互いの父は仕事も含めて親しくしているので、レイヴィスとは大人になってからも、きっと長い付き合いになるのだろう。いや、そうでありたい。彼もまた、ジェレミーと同様にかけがえのない親友で幼馴染みだから。
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