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「あの日、見たんだろ?」
「……何を?」
そう問われるのは分かっていたので、平然とした顔で答えてやる。しかしダヴィドは容赦せず、手のひらでぐいと喉頚を押してきた。
「っぐ……!」
気道を圧され、ヴィヴィヤンはもがく。大して力は入っていないが、こんな乱暴をされて黙っていられる質ではない。
「くそ、よせよ……っ」
どうにか手のひらから逃れ、ヴィヴィヤンは咳込んだ。図体ばかりは大きいので、下手に逆らったら身が危なくなるのが癪に障る。
「さっさとほぐせ」
しばらくはこちらの顔を見定めていたダヴィドだったが、やがて簡潔に命令してくる。
ヴィヴィヤンは唾液で中指を湿らせ、それを後孔に押し込んだ。主と一緒で慎みを知らない肉蕾は、ぬちゅりと指を受け入れる。ダヴィドもまた前立てをくつろげ、己のものをしごき始めた。
「ジェレミーの従兄弟か……くそ、面倒な奴が入って来たもんだ」
膝を掴んで両脚を開かせ、ダヴィドがぐっと押し入ってくる。そして「おい、ヴィヴィヤン」と、怒張したもので串刺しにしながらこちらを睨めつける。
「あいつらに余計なことを言ったら……分かってるな?」
何のことだかさっぱり分からない、という表情を作り、ヴィヴィヤンはきゅっと肉茎を締め付けてやった。ダヴィドがうめき「淫売め」と腰を揺さぶってくる。
しばし、男の律動に身を任せる。ダヴィドは顔つきも口調も態度も気に入らないが、腰遣いだけは評価してやってもよさそうだ。
「っ、あ……」
「はっ、はっ……」
草木も眠る深夜の温室に、濡れた吐息と音が満ちていく。
硝子の天井から、墨色の夜空が見えた。ヴィヴィヤンは、揺れ動く肩越しにそれを眺める。ざわざわと、暗い森が騒いでいる音も聞こえた。どこか不吉さが立ち込めてくるような、梢が昏いおののきに震えるような夜だった。
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