海へ

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 幸太郎に会うのは久しぶりだったけれど、緊張なんて全くしなかった。そういう堅苦しいのは今更で、私はただ、幸太朗に二年ぶりに会えるのが嬉しくて仕方がなかった。街は最後に来た時と全く変わっていない。海の煌めきが、そこかしこの白い壁に乗り移ってるみたい。  潮風で寂れた駅を出て、それから暫く緩い上り坂が続いている。大きな木で陰っている場所へ出くわすたび立ち止まって、細やかに光る眼下の海を眺めながら、ゆっくり水を飲んだ。シャツが汗で背中にへばりついている。アスファルトが太陽で焼かれて、朧げに蠢いてるみたいだった。また木陰から出れば茹だる暑さが私を襲うけど、それすらも厭わないほど、浮かれていた。  道の先が、ただひたすら青一面、空になったかと思えば、後は下り坂だ。高台から見下ろす街は、白い壁や茶色い屋根、黄色い壁に青い屋根など、随分好き勝手に 幸太郎に会うのは久しぶりだったけれど、緊張なんて全くしなかった。そういう堅苦しいのは今更で、私はただ、幸太朗に二年ぶりに会えるのが嬉しくて仕方がなかった。街は最後に来た時と全く変わっていない。海の煌めきが、そこかしこの白い壁に乗り移ってるみたい。  潮風で寂れた駅を出て、それから暫く緩い上り坂が続いている。大きな木で陰っている場所へ出くわすたび立ち止まって、細やかに光る眼下の海を眺めながら、ゆっくり水を飲んだ。シャツが汗で背中にへばりついている。アスファルトが太陽で焼かれて、朧げに蠢いてるみたいだった。また木陰から出れば茹だる暑さが私を襲うけど、それすらも厭わないほど、浮かれていた。  道の先が、ただひたすら青一面、空になったかと思えば、後は下り坂だ。高台から見下ろす街は、白い壁や茶色い屋根、黄色い壁に青い屋根など、随分好き勝手に立ち並んでいて、でも私はこうした明るい雑居さが昔から好きだった。  また新しい木陰があったので、丁度入り込んで水筒を傾ける。そのついでに、手帳から写真を取り出す。それはもう大分、昔から手元にあったので、草臥れていたけれど、とても大切にしていたのであまり色褪せては居ない。ほとんど今と変わらない街、海が写真に映っている。この場所から眺める景色は多分、私が生まれるずっと昔から特別に美しいのだろう。
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