第一章 スコアブック

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 こんなものが、我が家に残っていたなんて。  二階の子供部屋の改装準備をしていて、思いがけないものを発見した。  どういう経緯で自分の手元に渡ってきたのか?  詳らかには覚えていないが、少年軟式野球時代のスコアブックが出てきたのだ。  荷物運びの手を休めベンチに腰を降ろして、20年の時を経て私の懐に舞い戻ってきた スコアブックを、少年の心で開いてみる。  『5月xx日。音羽町少年野球大会。於・小松原運動公園。 』  最初のページに書かれた内容を見ると、これは私が小学校六年生だった時の物らしい。  攻撃の推移を指でなぞりながら、私は少年時代の思い出を、瞼の裏のスクリーンに映し 出す。   「この試合もアイツの完封勝利だったんだな」  メンバー表の九番バッターの欄には、守備位置①(ピッチャー)として、  懐かしくも悔しいアイツの名が記されていた。  
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