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スコアブックに心を奪われていた私に耳に、自転車のベルが響く。
続けて、けたたましいブレーキ音が聞こえる。
「パンパー。ただいまー。今日は二本ヒット打ったよ」
秀彰の甲高い声がした。パンパというのは、秀彰が私を呼ぶときの呼び方である。
「ただいま」
智宏の落ち着いた声が続く。
「試合の結果はどうだったんだ」
と聞くと
「んー。まあまあかな」
とそっけない答え。
智宏が六年生、秀彰が五年生の年子で、二人とも地元の少年野球イーグルスに所属して
いる。
「7対2、10対8で二試合とも勝ったんだけど、二試合目は兄ちゃんがリリーフで8点
も取られたんだよ」
「うるさいな。お前だってチャンスには凡退だったじゃないか」
「智宏選手が怒っているよ。ニャシャ・ニャシャ・ニャシャ」
秀彰が智宏をからかって妙な踊りを踊ってみせる。
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