下野の国より

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 境内の眼下に広がる絶景は、デートコースにはうってつけのスポットとなった。  夏の日の、若いカップルのできごとである。  二人は途中の苔むした石段で立ち止り、スマホを装着した自撮り棒をかざした。 「はい。チーズ」  カシャ。  早速、画像を再生した。  一緒に写っていたのは、二人の足首を鷲づかみにしている、血まみれの四本の手首だった。  二人はぎょっとして、何もないはずの足元を眺めた。  肌には指の跡がくっきりとついていた。  その日のテレビニュース。 「石段で足を滑らせた男女が死亡しました。場所は・・」
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