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「本屋です。今日はよろしくお願いしますね」
鰻屋の紹介で派遣された彼の名は壊神慶太、元は鮨職人だがなんでもこなせるオールマイティな職人である。依頼料は材料費込みで彼に渡しているが、ちゃっかり助板として鰻屋の若衆がいるのを見て読子は「してやられたか」と額に手を当てた。
だが調理の主役はあくまで壊神という職人ということもあってパーティ料理は鰻尽くしという心配もなく用意された。
生鮨、太巻き、カニ汁といった寿司屋のメニューを中心に、刺身やサラダなど用途に合わせた一口サイズの料理が煌びやかに並ぶ。
鰻の方は子椀に配膳した櫃まぶしでお出しされたので時間がたっても味は落ちにくい。この点は今回用意された他の料理にも通じていた。
「ご苦労様です。壊神さんたちも食べていってくださいな」
「自分らは店に戻るのでお気遣いなく」
「私も雇われて来た以上は公私混同はいけませんので」
「お店の厨房じゃないんだし、たまにはいいじゃないか」
手伝いに来た鰻屋の面々は残念そうな顔で帰って行った。だが人魚書店にはパーティは終わるまでいる予定ではあるが、プロとしての決めで読子の申し出を断る壊神に対して脇から女性が声をかけた。
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