本屋さんと出張料理

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「そういうわけにはいきませんよ。久しぶりですね、マドカさん。まさかこんなところで顔を合わすなんて」 「それはこっちのセリフさ。久しいね、壊神さん。阿澄が会いたがっていたよ」 「あの……ヒカルちゃんとはお知り合いなの?」 「一応ね。ウチのバイトの阿澄とは古馴染みで、その縁でいろいろと。アイツも運がないなあ、来ていたら会えたのに」 「あの子の力が必要になったときは連絡しますよ。それまでは思う存分、鍛えてやってください」 「りょーかい」  親友とたまたま雇った料理人が知り合いだったことで 会話が弾む二人を見て、読子は「邪魔しないほうがいいかな?」とその場を離れる。  バイトのメンバー全員に顔を出し終えていよいよ料理に手をつけると読子はその味に蕩けた。  特に酢の締め加減が絶妙な光り物とふんわりとした太巻きはこれまで食べてきた寿司は何だったのかと思うほどに美味である。口直しのカニ汁も出汁が濃くてそれだけで充分な一品料理であり、結局お茶で舌を洗わなければ口の中をリセットできない。それほどの奔流にメスとしての自分まで揺さぶられて眼が潤う。  そんなエクスタシー状態の読子をヒカルとの世間話終えた壊神が肩をたたく。 「本屋さんは他の皆さんの相手で聞いていなかったようですからちょっと説明させてください」 「???」     
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