プロローグ

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 声も、似ている。だが、このルイと、ライは、双子というわけではない。 『村』では、子供は一度に3~4人生まれる。ライたちも4人兄弟で、ほぼ間違いない通り、男だけだった。…そして、子供を産む機能が付いていたのが、この2人だった。  体内にその機能があるとは──ふつうは自覚するらしいが…ライは、自分の中のそれを認識したことはない。はっきり言って、一度もだ。  それはライが、とりわけ攻撃力の高い、男性的な性質のせいだろうと、自他共に認めていた。  4人兄弟の中で、最初に目を開け──自分たちは一度に生まれる為、目を開けた順に兄、弟、が、決まる──何でも、いちばんの兄として成長してきた。  それは兄弟内に留まらず、同世代の子の間でも、ライは早く周囲を出し抜き、力なども強かった。  だから、発情期になって、各々の体に異変が出始めた頃…意外な事実に、周囲が気づいた。 『ライって……いい匂いがしないか?』  誰も、ライを怖れて確認はできなかったが、子供を産む者特有の匂いが、時々、鼻をつくことがあった。  だが…まさか。あんな、他の男より男らしいライが、まさか。  顔までよく似た弟のルイが、いつも傍にいるからだろうとか言われ、また、それも信憑性が高かった。     
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