プロローグ

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 それに、村の大人たちは、何故かそのことには触れなかった。  だから、ライにその機能が付いていたとしても──嫁にすることはできないのだ。何かはわからないが、そうなのだろう、と、子供たちは疑問を飲みこんでいた。  しかし…男として優れた男が、子を生んできたのもまた、この村の歴史だった。  時期が来れば、どんな男も例外はない──多くは男に選ばれて、だが、ライの場合は自分が選んだ相手の子を、生むことになるだろう…  村の大人たちはその時まで、そっとしていただけなのだ。  ……それなのに。 「大体、この村の中だけで生きて死んでいくなんて、あり得ない…!」  ライは10代の間、そう息巻き、その意志は変わることがなかった。  高校卒業後、就職も進学も許されなかったが、村の内外でバイトをしていた。そうして資金を貯め、外界とのつながりを持ち、隙あらば出て行こうとして──  それは遂に、看過できないものとされ、ライは一週間ほど前から、村外れにある、この牢屋に閉じ込められている。  廃社になった神社の随身門を改造し、本来は神像が安置される場所に、人間が入れる様にしてある。だから面会も可能だし、木枠のあいだを通るものは差し入れ放題だった。     
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