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畳の上に直敷きの布団は──確かに、そういう面がある。
──背面を怪我しているのに、そんな寝床を与えた僕が短慮だったか…
そこがこの別荘でいちばんの、客用の寝場所だったわけだが──だが、「怪我に障るから、自分のベッドに寝る?」とは、もし時間が戻せたとしても、言わなかっただろう。
「…まぁ、正直、驚いたけど……きみがいいなら、ここで寝る?」
もう、それしか他になかった。
「俺はいいけど、ホントにいいの?」
ライは目を輝かせて──本当に、目がきらっと光った。
──? 人間の目は、闇の中で光ったりしないぞ…
目に疾病がある時など、特殊な場合のみだ。…だが、ベッドライトが反射しただけかもしれないと、昂士は思い直す。
「昂士さん…?」
不意に、昂士さん、と、呼ばれるのが定着しているのに気づく。高浜先生と呼ばれるのが、正直いまでもぴんとくるが、それではおかしいし、高浜さんと呼ばせるのも微妙だ。自分も、ライと名前で呼んでいる…呼ぶしかないのだから、いいだろう。
「ん、あぁ。…いいよ。どうせ、ムダに広いベッドだから」
「そうなんだよね。デカいベッドに寝てるんだなーって、最初、思った」
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