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ルイは覚悟を決めた面持ちで、そう言って…ライの掌に自分の掌を叩き合わせた。ぱちんという音が響く。
それが、ライの逃走の手助け開始の号令となった。
ルイは、ふたりを隔てる木柵の一本に、手を掛ける。差し入れをしている時に、偶然、手が当たって気がついたのだ。よりにもよって真ん中にある一本の木が、朽ちてぐらぐらになっていた。
細工と構造上、内側からは無理だが、外側から強く引っ張れば、引き抜けそうに…
「ありがとう。誰かにやってもらわないと、だったけど、ルイにやってもらえるとはな」
「僕の力でも、できることと言ったら…」
そう言って、力技で木を引き抜く。ルイはか弱そうに見えるが、村の外の男たちと比べれば、結構なバカ力の部類に入る。…この村に生まれた者は体質が特殊で、一事が万事、ふつうの人間と異なる。
「…ほら。偶然、外れちゃったよ」
村内では非力な部類のルイが、木枠に手をかけて差し入れをしていたら、木が朽ちていたらしくて取れてしまい、ライがその隙間を通って、逃走──勿論、やめる様に説得したが、止めることはできなかった…というシナリオを演じながら、ルイが言う。
そんなシナリオ通りになってしまっては、ただでは済まないと思うが…誰かがやらなくてはならなかった。
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