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「俺は猫になりたいなぁ……」
その声が犬に聞こえたのだろうか、隣にいた犬が再び横目で考える人を見た。
「チャチャ!」
騒いでいた少年の1人が犬に向かって叫んだ。考える人の隣の犬はつまらなそうなさっきまでの態度とは一変し、すっくと立ち上がると尻尾を振り切れんばかりに振り、少年のもとに駆けていく。
あいつはあいつであれが幸せなのだろう。
考える人は立ち上がる。公園を後にして家へ向かう。その途中の商店街で考える人は猫を見た。魚を咥えて猛ダッシュで駆けていく。後ろから鬼のようなおばさんが駆けてきて、箒を振り回す。
あいつらもあいつらで大変だ。
考える人はふぅっとため息をつくと、足を止めた。
俺は来世は何になりたいだろう?
首を傾げる。しばらく考えていたが答えは出ない。肩に誰かがぶつかった。ハッと意識が戻り、考える人は考えることを辞めた。
あぁ、俺の悪い癖だ。俺はまだ死にかけてやしない。死んでから考えよう。
考える人は納得しないながらものんびりと家へ帰って行った。
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