淡い記憶

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 彼女は覚えていたのだ。しかし、よく場所が分かったなと、感心する。SNSで見つけて探しにきたのだろうか?何にせよ嬉しい。 「立ち話じゃ疲れるし、近くのカフェにでも行こうか」 「うん」  彼女はニコッと笑い、腕に抱きつく。美人に抱きつかれるなど、醜男の俺になんて不釣り合いな光景であったろうか。どぎまぎしながらカフェに向かった。  彼女とどれだけの時間話しただろう。なんでもない話しをした。でも俺からの一方的な会話だった。彼女は俺が振った質問を華麗にかわし、自分の話はしなかった。 「あの日の約束覚えてる?」  彼女が聞いた。いろいろな質問をされたがこの質問にはなんだか重みを感じた。俺は約束というと10年後に会う約束しか思いつかない。 「会うって約束かな?」 「覚えてないか。十年前だもんね」  彼女は少し寂しげに笑う。 「本当にごめん、何だっけ?」 「もういいよ。忘れていても、話していれば約束を守ってくれたってわかるもの。約束を破ったのは私の方だから」 「どういうこと?」 「さあ、行かないと」  彼女は立ち上がる。 「帰るの? また会おう? 連絡先を……」  慌てて止めようとしたが、彼女はクビをふる。 「きっとまたずーっと先で会えるよ」  彼女の笑顔にドキッとして思わず見とれてしまう。どんなあほ面だったろうか。そして目を疑った。
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