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数年前に、私の兄が体験した話。
ある夏の早朝、遠方へ遊びに出かける予定のあった兄は始発のバスへ乗るため、一人墓地のすぐ側にあるバス停に立っていた。
他に並ぶ客はおらず、誰もいないバス停でスマホをいじりながら時間を潰していた兄は、ふと視界の端で何かが動いていることに気がつき、何だろうと思いながら首をそちらへ向けると、バス停のすぐ横にある小さな公園、その敷地内に設置されたブランコが一組だけユラユラと動ているのを見てしまった。
風が吹いているわけでもなく、周りに人の気配もない。
大体、もし風が原因で揺れているなら、隣にあるもう一組のブランコも揺れていなくてはおかしい。
“何だあれ、気持ち悪ぃな……”
仮に、兄がブランコに気がつく直前まで誰かが漕いでいて、それで揺れているだけだとした場合も、時間が経てば経つ程その揺れ幅は小さく勢いが弱まっていくのが普通だ。
だが、そのブランコは一定のリズムと勢いを崩すことなく終始揺れ続け、結局兄がバスに乗り込みその場を離れる瞬間まで止まることはなかったという。
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