東京難民

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数分遅れで入った教室はまさにカオスさながら ー 化粧をしたりスマホをいじったり、大声ではしゃぐ生徒達の、いつもと変わらぬ光景が甲本の視界に飛び込んで来た。 新任教師の話だと、2年2組の生徒達は扱い易いと言ってはいたが、彼女らが相手を選んで態度を変えているのは明らかだった。 生徒を監督出来ない中堅教師。 甲本は、いつ頃からかそう呼ばれていた。 『静かに、今日は大事な話があるから・・・』 甲本の声に反応するひとりの生徒がいた。 最後尾の川野ちずるは、このクラスのリーダー格の生徒で、イジメグループの中心的な役割を果たしていた。 『早くしてよ。ちゃっちゃと終わらせて、係長!』 ちずるはそう言いながらスマホをいじっていた。 係長という言葉に、クラスメイトから笑いが起こった。 イジメを受けている生徒は今日は休んでいた。 それなら、わざわざその話をしなくても良いのではと思いつつも、甲本はゆっくりと話を切り出した。 『昨今・・・』 その途端に、またもやちずるが食ってかかる。 『さっこんだって! うけるー!』 笑い事が教室内に響く中、甲本は殴ってやりたい衝動をグッとこらえて深呼吸をした。
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