4人が本棚に入れています
本棚に追加
そのとき、三人の胸元から再びどんぐりが声を発した。
「カイ。聞こえているかな」
開が呼ばれたにも関わらず、令と凛がびくっとして立ち止まる。先生がふたりの皮肉に反応したかと思ったのだ。
開の目の前で立ち止まり、心持ち肩をすくめているふたりの背中に思わず笑いそうになった開は、立ち止まってから一呼吸置いた。
「はい、先生」
「今夜、街に来てくれないかな。街まで来てくれれば、わかるようにしておく。夕食はこちらで用意するよ」
先生は、令と凛の皮肉が聞こえていたのかいないのか、それについて触れようとはしない。
「ひとりでですか、先生」
「うん。ひとりで来てほしいんだ。話したいことがある」
図書室の皮肉についての話題ではないらしいと、令と凛が振り向く。
「どうして私たちもいっしょじゃいけないんですか。私も街で食事したいなあ」
凛が少し不満そうに頬を膨らませた。
「そうだね。俺も街での食事がいいな」
令も続けていうが、その表情には微笑みが浮かんでいる。本気でいっているわけではないのだ。
令も凛も、先生のいうことに逆らう気はなかった。
「わかってくれるとうれしいが、カイに話があるんだ。頼むよ。君たちふたりの街での食事は、近いうちに実行させてもらうから」
先生は少し困ったような口調で話した。
最初のコメントを投稿しよう!