02 The east of the garden of Eden

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 その分岐点に、凛が立っていた。  長袖の赤いトレーナーに細身のジーンズ。小さめのリュックサックを背負い、腕組みをしたままいらいらしたように片方のつま先をとんとんと地面に打ちつけている。  肩にかかるくらいの髪が両頬を隠しているが、その奥でこれ見よがしに頬をふくらませていた。  開と同い年の凛は、令よりもふたつ年上になる。 「カイ、レイ、遅い」  分岐点の脇に立つ大きな樹の陰に身を潜ませていたために、ふたりの目には凛がいきなり現れたように見える。 「リン、どうして」と開が口を開きかけたとき、令が「あっ」と大きな声を出した。 「忘れてた、ごめん」  開が、え? と令を振り向く。凛がぽかんと口を開ける。 「そういえば昨日、リンを誘ったんだ。今日のお昼、山に行くけどって」 「私のこと、忘れてたんだ。相変わらずだね、レイは。お弁当、作ったのに」  凛はつかつかとふたりに歩み寄ると、開の腕を取った。そして手を握ると「行こっ」というなり、開を引っ張って山への道へ入って行く。少し歩いたところで振り向き、凛は令にあっかんべえをした。  令は苦笑いをしながら、ふたりの後を追った。  開は凛に手を握られて引っ張られながら、凛は何人分の弁当を作ったのだろうと考えていた。
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