02 The east of the garden of Eden

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「ふたりはごはん食べたんだよね。私はおなか空いた。この天国でお弁当をいただきます」  凛はそういうと、広場の中で腰を下ろした。開と令は顔を見合わせてから、凛のそばに同じように座り、腰に取りつけていた水筒を外した。 「せっかくだから、もらおうかな。弁当」  令が、凛の持ち出した弁当をのぞき込む。その弁当は、やはり握り飯だった。  ただ、さっき開と令が歩きながら食べた握り飯に比べると、米の粒が倍ほどの大きさだ。  品種改良前の米だった。改良前の米は今でもそれなりに食べられている。粒が大きく扱いにくいために普段はあまり使用されなくなってはいたが、やはり栽培が改良後の米に比べれば簡単という利点は消えていないし、味も悪くはなかったからだ。 「僕は、こっちの方が好きだなあ。やっぱり、自然のままが一番だよ」  開が凛の作った握り飯をひょいと持ち上げていった。そして、一口かじる。 「うん、うまい」  塩味の効いた握り飯は、さっき食べたばかりとはいえ、やはりうまいのだ。  凛と令も、握り飯をつまむ。  握り飯は全部で五つだった。それが三人分なのか、あるいは二人分なのかは開には判断できなかったし、それを尋ねようとも思ってはいなかった。  握り飯が乗った容器の下には、さらにもう一つ、おかずの入った容器があった。凛が、その容器をふたりに差し出す。 「おなかいっぱいでしょうけど、責任持って食べてしまってね」  おかずは玉子のだし巻きと、焼き魚の切り身だ。切り身は十センチ四方ほどもある。凛の性格を体現したかのようだ、と令は思う。 「これ、なんの魚?」  令の質問に、凛はそっけなく答える。 「イワシだよ。イワシの切り身。おいしいんだから」  やはり改良前のイワシだった。開はその切り身を指先でつまみ上げて一口かじる。自分は凛と好みが合っていると思う。開もだいたいにおいて改良前の方が好きだった。
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