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風邪をひいて具合が悪いときに、一人の部屋で寂しい思いをさせることはないかもしれない。
どこかにある、年が離れている二人が一緒に居ることの罪悪感みたなものを感じなくなるかもしれない。
一緒の部屋に住んで、一緒の生活をして。隣にいることに、今よりも正当な理由を与えてもらえる。
それならば、結婚に対する自分の小さなプライドなんてとるに足りないものだ。
一人で平気なんて顔をして、誰よりも寂しがり屋な彼女のそばにいる最強の理由になるのならば。もう寂しい思いをさせなくて済むのならば。
夫婦になるのも、悪くはない。むしろ最良の選択だろう。
でもまあ、
「今じゃねぇよ」
小声でぼやく。
もうちょっと格好つけさせて欲しい。高い指輪を買うお金はまだなくても。
お湯が沸いたので温かいお茶を自分の分もいれる。
「はい」
席に戻って彼女の眼の前に湯呑みを置く。
「ありがとう」
彼女の方も冷静さを取り戻したらしい。いつものように微笑んだ。
今この状況で、自分がまだ学生の段階で、夫婦になるのは色々大変かもしれない。周りの目もあるだろうし。でも、もしも彼女が頷いてくれるなら。今よりも幸福にしてあげられるのならば。周りの目は躊躇う理由にはならない。
「一応風邪薬も買ってきたから、ご飯食べたらそれ飲んで」
「ありがとう」
「あとは水分とってね」
「うん」
恋人よりも一つ上の夫婦になって、彼女を守る。それができるにこしたことはない。
とりあえずまあ、ちゃんとプロポーズすることを考えないとな。
微笑みながら、そんなことを考え始めた。
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