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龍一は沙耶の言葉を飲み込むような沈黙のあと、
「そっか」
ふぅっと息を一度吐き、呟いた。
「わかった。ありがとう」
柔らかく微笑む。ようやく、顔が緩んだことに少し安心する。
「ひとまず、この話は一旦置いておいていい?」
「うん」
「ありがと。……まだ昼前だし、どこか寄って帰ろうか。せっかく日曜日なんだし」
行こう? と差し出された片手に、素直に自分の手を重ねる。
「ねぇ、大丈夫?」
「うん」
思っていたより力強く頷かれた。
「つまり、あとは俺のプライドが問題なんだってことはわかった」
それからちょっとおどけた調子で、
「しかし、この問題は意外と根深いのでですね、いろいろ一旦忘れてください。今日のことは」
付け加える。
「わかった」
「よっし、じゃあ、どこ行こうか。どっか行きたいとろある?」
切り替えたのか、いつものように彼は言った。
二ヶ月後、プライドの問題が片付いた彼から、改めてプロポーズされるのだがそれはまた別の話。
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