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「付き合って四年経つんだし、結婚したらどう?」
「……急に呼び出して、何を言うのかと思ったら」
姉・雅の言葉に、龍一はうんざりと呟いた。日曜日の十時なんていう早い時間に、甘味処に呼びつけられたと思ったらこれだ。
「円さんまで、なんなんですか?」
雅の隣でわらび餅をのんびり食べている、恋人の姉に問いかけると、
「いや、そうだなーっと思って」
のんびりとした言葉が返ってきた。
「そうだなーじゃないでしょ」
呆れた、と龍一の隣の沙耶が呟いた。
自分の家族と恋人が仲良くしてくれるのは嬉しいし、恋人の家族と自分の家族が仲がいいのも悪くない。だけど、この姉二人が仲良すぎるのは正直迷惑だ。まさか、二人で結婚をそそのかしてくるとは。
「言いたいことはいろいろあるんだが、俺はまだ学生だし」
「卒業したら卒業したで、まだ研修医だし、とか言うんだろ、どうせ」
「……いや、そうだけど」
だって、事実だし。
「半人前なのに、結婚申し込むなんてありえないだろ」
あとなんで、こんな話を恋人の前でしなきゃいけないんだよ。呼び出すならせめて、俺だけを呼び出せよ。
「そんなこと言って、あと何年待たせるつもりだ?」
「最短で四年ってところかしらね。あらやだ、沙耶、いくつになっちゃう?」
「今の円姉よりは若いよ?」
「……あんた、いやな子ね」
勝手に自滅している円はさておいて、
「待たせるってなんだよ」
「待たせてるだろ? 四年制大学なら今年もう社会人なのに」
「そうだけど……」
本当、この姉は嫌なことばっかり言ってくるな。
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