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「あの、別にあたしは……」
「あら、沙耶。結婚したくないの?」
「そんな話はしてないでしょ?」
「だけど、学生で結婚とか」
「学生でも自分たちで生計を立てられるなら、別に何の問題もないじゃない。ねぇ、沙耶? どうせ、あんた貯金たくさんあるでしょう? 友達もいないし、使う機会もなかったんだから」
「……あるけどね」
沙耶の言葉に、微妙に顔をしかめてしまう。
「ちょっと」
それを見咎めて、沙耶が声をかけてくる。
「この手の話で、そういう顔はしないってなったじゃない」
「そうだけど」
どんなに頑張っても年齢差は縮まらない。お互いに、7年の隙間に卑屈になる瞬間がある。でも、それに関しては不満を言わない、と決めた。
とはいえ、やっぱり気になるんだけど。
「ごめん」
「そうよー、仕方ないじゃない。この子、高校の時からうちの手伝いしてたし、卒業してすぐに働いてたし、残念ながらうちの仕事って給料良いし」
「ああ、やっぱりいいんだ」
「なり手がいないから」
「なるほど」
いや、雅が沙耶の仕事、お祓い稼業をすんなり受け入れてくれているのは助かるんだけど、そうじゃなくって。
「だけど」
「ねぇ、龍一くん。年齢と立場が逆だったらどう思った?」
「え?」
「別に結婚にそこまで疑問をもたなかったんじゃない?」
確かに、自分が年上で稼いでいて、沙耶が年下で学生だったらここまで抵抗しようとは思わなかった、気がする。養えばいいや、と思った。
「それって、男女差別じゃない?」
下手な男よりも男らしい生き方をしている円に微笑まれ、言葉に詰まる。
「どうなんだ、龍?」
待たせてる? 男女差別? ああ、もう! 好き勝手いろいろいいやがって!
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