純愛レビレート

レビレート婚：
　夫が亡くなった際に、残された妻が夫の兄弟（特に弟）と再婚をして婚家に留まること。世界各地で、広く見られるが、一部の地域、宗教、時代においては禁忌とされる。

　甲斐義翔(かいよしと)の一周忌法要は、自宅でささやかに執り行われた。故人は同い齢の未亡人、海音(みね)との間に子を設ける前に、三十二歳の若さで突然、世を去ってしまった。塗装会社の二代目社長として、現場にもしばしば出ていた身体は、見るからに頑健であったが、膵臓にできた腫瘍によって見る間に痩せて死んでしまった。創業者である父親、信一(しんいち)も、十九年前、義翔がまだ十四歳の時に亡くなっている。義翔の母親は、関西からこの北関東の小都市に嫁いで来たため、周りに頼る人も無かった。義翔と、小学生の勝翔(かつと)という二人の子どもと、何より夫の創り上げた塗装会社を残されて、途方に暮れたに違いない。その立場が、今は新しい未亡人、海音に引き継がれようとしている。長い読経と香が、部屋を満たしている。義翔の叔父にあたる信伍(しんご)が、小声で義翔の母親と言葉を交わす。信伍は地元の小さな予備校で数学と物理を教