第 二 章 幽 霊 の 正 体

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「いずれにせよ、その女性はマーちゃんに何らかの関係がある人なのよ。そんな気がする」 もしかするとそうかもしれないと、次第に思い出した。 「でも、それっていかにも日本的だよなあ。守護霊なんていうのは誰かのこじつけじゃあねえのか」  五郎がニヤついた顔で言ったが、「そんなことはないわ。西洋でも同じことよ」と、亜美はビールをグイッと呷りながら反論する。なかなかの飲みっぷりで、この女はむしろ男に生まれるべきだったかも、と俺は思った。 「キリスト教でも守護天使というものがあるの。そして、この守護天使はそれぞれの人間に付き添っていて、その人間を良い方向へと導くって言われているのよ。記録天使とも呼ばれているわ」 「記録天使?」  俺は思わず目を剥いていた。「そう、その人間の記録をいつも取っていて、それが死後の行く先決定に重要な役割を果たしているのよ」と亜美。この女はやはり栄養だけじゃないと、俺は思わず唸っていた。知識の量までが豊富で、こんなドジな五郎には不似合いな妹だ。しかも働き者だから、亜美みたいな女と結婚しておけば、一生遊んで暮らせる可能性があった。なに姑息なことを考えているのだろう、と俺は少し恥ずかしくなっていたが、まさか西洋にも同じようなものがあったなんて思いもしなかった。
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